気づきの入口④/知覚力を磨く
『知覚力を磨く』神田 房枝(2020)を、2023年の3月に読みました。神田の主眼は副題「絵画を観察するように世界を見る技法」に表現されています。
美術館の学芸員が作品鑑定をするときに行う絵画観察の技法が、他の分野にも役立つことを発見したイエール大学の医学部教授の授業の内容にヒントを得て本は書かれています。
神田の観察法の5つのステップは、(私の理解では)
①5W1Hなどを利用して、絵に描かれた状況がどんな場面かを把握する
②①で把握した状況から判断して、テーマの中心と思われる部分を観察する
③②で観察しなかった部分、例えば画面の隅の方も②と同様に観察する
④作品から少し離れたところから眺めて、①~③を総合して、自分の頭で絵画作品を解釈する
⑤③で観察した細部と④がしっくりと調和しているかを気にしながら、④ではないシナリオ(解釈の可能性)について勘案して、最終的な解釈をする
というものです。
注意点は、絵画観察を始める前に作品のタイトルや説明を読まないこと。
知覚とは、人が何かを見た(感じた)ときに、一瞬の間に脳が下す判断のことで、ほとんど無意識に行われます。無意識というよりは、自分の慣習に従った判断なので不自然さが生じないので意識しにくいということです。
ほぼ習慣化した判断がときに大事な情報を見落とす原因となり、とても深刻な問題に派生することがあります。見落としを減らすには、この観察技法がとても有効だと思います。
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