気づきの入口⑥/絵画観察
子どもの気づき①で紹介したVTS(Visual Thinking Strategies)と同時期に、同じくアメリカの東海岸で別の絵画観察法が開発されました。そのまま「観察力トレーニング」という名目の履修科目がイエール大学の医学部で始まりました。特徴は、観察力と鍛えるために絵画観察を行うことです。もともとの目的は、医学部生がCTの画像を解析するときの「観察能力が低下しているのを、なんとかしたい」ということでした。
そのカリキュラムの内容がまだ試験的な段階のときに、美術館で授業に参加している学生にレクチャーをする担当者だったエイミー・ハーマンは絵画観察の効力に驚き、その後、独自に観察力トレーニングのセミナーを始めました。
そのセミナーをまとめた本が2冊出ています。
『観察力を磨く 名画読解』2016
きっと観察力がアップすると思います。(私はアップしたと感じています。)
観察力を鍛えるための5つのポイント
①集中して見る
②注意して見る
③自分の力(頭)で観察する
④客観的に見る
⑤全体を見る・部分を見る
①がもっとも重要です。現代社会の暮らしでもっとも確保するのが難しくなっているのが、何かに集中する時間です。コスパ、タイパというように言葉さえ縮める傾向がそれをよく表しています。とりあえず、時間を確保して、観察する速度を意識的にゆっくりにしてみましょう。
まずは1つの作品に5分かけて観察してみてください。たぶん退屈すると思います。でも、その時間を使って②~⑤を真剣にやってみると、きっと5分じゃ足りないと思うことでしょう。
5分間を投資してみてください。つまんないと思ったら2回やる必要はありません。あなたにぴったりの別の方法がきっと見つかりす。
『問題解決のための名画読解』2023
こちらは前作にくらべ、より実践的というか、セミナーの具体例を詳述しているような内容です。心理学的な知見を土台にして、問題解決の本質をどう捉えるかを具体的に述べています。
※[ 気づきの入口④/知覚力を磨く ] の神田房枝は、上記の「観察力トレーニング」のカリキュラムが開発された頃にイエール大学に在籍中で、その授業のことを知り、後に、ハーマンと同様にセミナーを開催し、著書『知覚力を磨く』を執筆しています。
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