パズルの顔をしたアート
中村桂子『人類はどこで間違えたのか』の中に千住博『科学と芸術』から(芸術とは)「世界認識のための「切り口の独創性」なのです。」という文の前後が引かれています。
私の理解では、「世界の見方」を提案するのがアート作品(作者)の存在意義(使命)です。
最近『はじめの言場』という漢字を使ったカード・パズルを創りました。小学校1年~4年までに習う漢字642字の中から300字を選抜して、100字x3種類に振り分けたものです。1種類=100字あたりで表現できる二字熟語は700種類以上、300字全体では8000種類以上の二字熟語を作ることができます。
昨年制作した『α-NINJA』はアルファベットを使ったカード・パズルで、80枚のアルファベット・カードのセットです。4文字単語なら20種類、5文字単語なら16種類を同時に作ることができます。アルファベットはご存じの通り、全ての単語を表現することが可能です。
漢字とアルファベットが違うということは、ほとんどすべての日本人(大人)は理解しています。
でも、それが具体的にどのように違うのか。自分自身と文字との関係からそれを理解するのはなかなか難しいのかもしれません。
『はじめの言場』は小学校4年生(10歳)までに習得する漢字です。ヒトの脳の発達段階を見ると、10歳までに脳幹や小脳が発達し、大脳が本格的に発達するのは10歳からです。いろんなことに興味を抱き、知的好奇心に導かれながら、自分が感じた世界、自分の体験を表現することで、大脳は発達します。その元手となる漢字が642字の漢字です。その中から抜粋した二字熟語になりやすい字は、私の考えでは、表現の源泉(根幹)になる部分の文字群です。
それはそのまま、日本人が何かを考えるときの中核になる文字群とも言えます。文字を選抜する過程で分かったのは、高学年や中学校で習う漢字は、より具体的な内容表現に適した文字で、作ることのできる二字熟語は少なくなっていく傾向にあるということです。
世界を捉える思考の原風景のようなものが、『はじめの言場』の中にあります。そのことは、『α-NINJA』の体験との違いを比較してみるとよりはっきりと感じられると思います。
このように、世界の見方(見え方)について洞察を与えるような側面を持つという意味で、『はじめの言場』も『α-NINJA』もアートなんだなぁと改めて思いました。
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